最高裁判所第三小法廷 昭和28年(オ)347号 判決 1956年11月27日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由第一、二点について。
所論は単に抽象的に原判決が所論憲法その他の法令の条規に違反することを主張するものにすぎず、違憲の主張に当らないのみならず上告適法の理由とならない。
同第三点について。
一の(イ)は原判決の事実認定を非難するものにすぎず上告適法の理由とならない。
一の(ロ)所論の如く、増歩地換地処分についても土地区劃整理委員会の意見を聞かなければならないことは当然であるが、(特別都市計画法一〇条)、右処分につき土地区劃整理委員会の意見を聞くことは必ずしもその処分の有効要件であると解することはできない。けだし同法施行規則一一条が、整理施行者の諮問に対し土地区劃整理委員会がその召集に応ぜずまたは意見を提出しない等のことがあるときは、整理施行者はその意見を待たないで直ちに処分または決定をなすことができる旨規定していることよりするも、右の諮問は単に換地処分等をなすについての一応の手続としてこれを要求したに止まり、これをもつて右処分の有効要件たらしめたものと解するをえないからである。されば原審が上告人の主張に対し所論委員会の意見を聞いたか否かを確定しないで本件増換地処分を適法であるとした判断は違法であるが、この違法は原判決に影響を及ぼさないから、所論は採ることができない。
同二について。
従前の土地所有者はその所有権について登記を経ている以上、その者が特別都市計画法によつてその換地予定地の指定を受けた土地について所有権取得の登記をしなくても、同法一四条により右換地予定地の使用収益権を有し第三者はこれに対し登記の欠缺を主張し得ないものと解するのを相当とする。従つてこの点に関する原判決の判断は相当であり、論旨は理由がない。
同三について。
行政庁が原判決説示の関係の工作物の移転を命ずるには一般には換地予定地を指定しなければならないが、従前の土地について所有権以外の未登記の権利を有する者が特別都市計画法施行令四五条に従いその権利の届出をしない場合には換地予定地の指定をしないで右工作物移転命令を出しても違法でないと解すべきである。また、原判決が、換地上における従前の借地権については特別都市計画法一四条により借地法、建物保護法等の適用がないためその借地権者は移転命令を受けた以後その土地を使用収益する権限を失い爾後不法にこれを占有することとなるとの趣旨で上告人の抗弁を排斥した判断も相当である。論旨中違憲及び民法一条違反の主張は実質は右移転命令の違法なること及びこれと借地法、建物保護法等の適用があることを理由とする本件土地明渡請求の不法なることの主張に外ならないから所論は採用することができない。
同四について。
原判決によれば所論の点に関し所論の各法条を適用すべき場合に当らないとして上告人の主張を排斥すべきものとした趣旨であることは自明である。論旨中違憲の主張は実質は上告人の主張を排した原判決の単なる法令違反を主張するものに外ならない。論旨は理由がない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三)